パニック障害に苓桂甘棗湯(りょうけいかんそうとう)

2015年8月10日

自律神経失調症と漢方

パニック障害に苓桂甘棗湯(りょうけいかんそうとう)

不安神経症とパニック障害

苓桂甘棗湯(りょうけいかんそうとう)は不安神経症やパニック障害によく使用されます。

不安神経症やパニック障害と一言で言っても、その症状は様々です。確定には医師の診断が欠かせませんが、それぞれの代表的な症状は以下のようなものです。

【不安神経症】

突然の動悸、突然の不安感、パニック発作、息苦しい、めまい、過呼吸症候群、心臓神経症(動悸や胸の痛みなど)、各種恐怖症(乗り物、留守番、外出恐怖、閉所、電車、飛行機、広場、嘔吐、高所、外食など)

【パニック障害】

不安神経症の症状が特別な原因やきっかけはなく起こる。

苓桂甘棗湯の証は「奔豚(ほんとん)」

苓桂甘棗湯が全ての不安神経症やパニック障害に効くかというとそうではありません。

漢方で大切な考え方の一つに「同病異治(どうびょういち)」があります。これは、たとえ同じ病気だとしても、証(体質)によって治し方が違うという治療原則です。当然、不安神経証やパニック障害もこの原則に従わなければ、うまく改善していきません。

苓桂甘棗湯の証とは、お腹の中から頭に激しく突き上げてくる動悸です。

イメージとしては、まるでお腹の中に豚がいて急にドコドコドコドコ!ピギィーーッ!と胸の方にすごい勢いで駆け抜けてくるような感じです。急にお腹あたりから激しい動悸が始まり、上がってきて胸の動悸、そしてさらに上がってめまいや意識混乱になってしまう特徴があります。

こういった証を昔の人は一言で「奔豚(ほんとん)」と呼んでいました。

奔豚(ほんとん)とは豚の脱走劇

私見ですが、お臍の下あたりに本来の豚の棲家(豚小屋!?)があるように思います。ここは丹田と言う場所で、ここに気を込めると心身ともに安定するところです。この場所に豚が戻れば、あの凄まじいエネルギーが上手に使えるようになると考えています。

奔豚とは丹田(豚小屋)からの豚の脱走劇のようなものかもしれません。

捕まえようとするとドンドン逃げる。だからおいしいエサで再び丹田へ導く。苓桂甘棗湯とはそういう漢方薬なのかもしれません。

奔豚の証とは、自分ではどうしようもないような急激な症状で、いつその発作がくるかの恐怖感も非常に強く、また以前発作がでた場所などにも怖くて行けなくなってしまいます。自分が自分でなくなるというか、そういったどうしようもない姿を人に見られてしまうことも心に大きな傷を残してしまいます。その事が新たな悩みの種になり、ますます豚が走り回る悪循環に・・・。

しかし、少しずつ自分に自信を取り戻し、自分自身でお腹の中の豚と上手に付き合えるようになることは可能です。漢方薬もその良いきっかけの一つになると思います。無理やり捕まえて抑えるのではなく、もとのあるべき場所に自主的に戻してくれるところが漢方薬の良い所ですね。

私もこれまでに数名の奔豚の証を持つパニック障害や不安神経症の方に、この苓桂甘棗湯を使用して、動悸や不安感、めまいなどの症状が良くなって喜ばれた経験があります。

苓桂甘棗湯の中身

茯苓(ぶくりょう):サルノコシカケ科の菌類。水気の逆行を下降する働きがあり、精神安定や水分代謝を整える働きがあります。

桂皮(けいひ):クスノキ科の常緑高木の樹皮。上衝を主治すると言われ、シナモン特有の香りも手伝い、のぼせや動悸など気の異常を鎮める働きがあります。

甘草(かんぞう):マメ科カンゾウの根。急迫を主治すると言われ、発作のような症状をその甘さで鎮めてくれます。

大棗(たいそう):クトウメモドキ科のナツメの果実。気や水の逆行と共に上がってくる血分を下降させる働きがあり、精神安定に働きます。

簡単に言うと、キノコ、シナモン、天然甘味料、ナツメの実で、食べ物ばかりです。

これをコトコト煎じて飲むと、お腹の中の豚がおとなしくなってしまいます。きっとお腹の中の豚も雑食なのでしょう。

 

 


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執筆者 伏見 浩幸
漢方薬の持つ力の素晴らしさとともに、人間の持っている力もすごいなぁと日々感じています。漢方薬だけではなく、私たち自身も相談員としてお客様の「薬」なることはもちろん、今、色々なご病気で悩まれている方々も、授かった命と一緒に当然備わっている自分自身の自然治癒力に自信を持ち、自分自身が「薬」になるお手伝いができればと考えています。そんな願いを込めて一話一話を綴らせていただきます。どうぞよろしくお願い致します。

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