抗がん剤の副作用②口内炎には半夏瀉心湯以外にも色々~飲み方にもコツ~

2017年7月12日

癌と漢方

抗がん剤の副作用②口内炎には半夏瀉心湯以外にも色々~飲み方にもコツ~

口内炎はQOLの低下を招く

がん化学放射線療法の副作用のひとつである「口内炎(こうないえん)」は、ほとんどの方が経験するものです。

精神的苦痛により食欲も落ちる方が多く、そこに抗がん剤など薬剤による食欲不振、そして口内炎という三重苦で食事がまともに食べられないというQOLの低下を招いてしまいます。

口内炎には、氷を口に含みながら治療を受ける、ステロイド塗布剤、市販薬の貼付剤などといった治療法がありますが、それでもなかなか対処しきれないのが現状だと思います。

ファーストチョイスは熱邪を取る黄連解毒湯

実は口内炎に使う漢方薬があります。漢方では口内炎を「熱邪」と捉えます。

熱を取る漢方薬の代表格は、「黄連解毒湯」です。

私の考えでは、口内炎の場合、まずは黄連解毒湯をうがいをして飲んでみて、その後の症状に応じて変えていくのがいいのではないかと思います。

黄連解毒湯=黄連・黄ごん・山梔子・黄柏の4つの生薬からなります。

この黄連解毒湯をベースにした漢方薬が色々あります。口内炎だけでなく、その他の全身状態を改善する目的で、以下の漢方薬をご紹介します。

→皮膚・喉の炎症・副鼻腔炎・目の充血などがある場合:荊芥連翹湯

→皮膚・喉の炎症、神経質な場合:柴胡清肝湯

→手足のほてり、乾燥肌、貧血がある場合:温清飲

→手足のほてりが顕著、乾燥肌、貧血、出血傾向がある場合:黄連阿膠湯

胃腸症状が出てきたら瀉心湯類

熱邪の中でも胃腸系統に熱があることを「胃熱」と言います。胃熱を取る漢方薬には「瀉心湯類」があります。

瀉心湯類は食欲不振や下痢、胃潰瘍などに良く使います。”口内炎”で調べると「半夏瀉心湯」が一番に出てくると思いますが、まずは急性期に黄連解毒湯を使用し、その後食欲不振が出てきたら、瀉心湯類にするとベストではないかと思っています。

実は同じ瀉心湯類で口内炎にもっとおすすめなのが甘草瀉心湯です。

甘草瀉心湯は半夏瀉心湯の甘草が2.5g→3.5gに増量になったもので、漢方ではより虚証(体力がない)、より神経質な方に使います。

甘草は皆さんもよくご存知の「グリチルリチン」が主成分で、抗炎症作用があります。したがって、口内炎には甘草が増量になった甘草瀉心湯のほうがよりおすすめです。おそらく、甘草瀉心湯はマニアックな漢方薬のため、粉薬を大手漢方薬メーカーが作っていないので、半夏瀉心湯が一番使われているのではないかと思います。

また、一つ注意点としては、甘草は偽アルドステロン症というむくみや全身倦怠感などの副作用が出ることがあります。腎機能が落ちている時はこの副作用が出やすいですし、抗がん剤治療中はむくみや全身倦怠感が出ることが多く、副作用と見分けがつかないということも考えられます。すでにむくみや全身倦怠感がある場合や腎機能が落ちている場合は、甘草瀉心湯は使わないほうがいいでしょう。(半夏瀉心湯にも甘草は2.5g入っているので、やはり避けたほうがいいでしょう)

陰虚の口内炎には補陰剤

口内炎の原因となる「熱邪」の中でも、陰虚による熱邪の場合は、「補陰剤」を使います。

ベーチェット病などで起こる口内炎などもこのタイプです。がん治療が長引いてくると、体が消耗し、陰虚体質になっている方も多いと思います。寝汗、微熱、ほてりなどが出やすい場合は陰虚になっている証拠です。

口の中がパサパサする、口や喉が渇く、ほてり、微熱、咳がある場合は滋陰降下湯や麦門冬湯をおすすめします。

腰痛や耳鳴り、物忘れなどがある場合は知柏地黄丸がおすすめです。

黄連解毒湯のグループで紹介した黄連阿膠湯も陰虚体質改善になります。ほてりや不眠、皮膚の乾燥、出血傾向があれば黄連阿膠湯がおすすめです。

飲み方のコツ

漢方薬はほとんど温かい煎じ薬で飲むのが一番よいとされていますが、口内炎のように熱邪の場合、冷やして服用することもあります。

特に、黄連解毒湯や甘草瀉心湯は冷たくしたものを含嗽し、患部に直接当てて、その後飲み込むのが効果的です。

黄連解毒湯は大変苦味の強い漢方薬なので、罰ゲームのような気分になるかもしれませんが、良薬口に苦しと思って頑張って飲んでいただければと思います。

 

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執筆者 福田 茜
九州大学薬学部卒 漢方みず堂漢方専門相談員
病院やメーカーを経て、株式会社漢方みず堂へ入社。
3児の母でもあり、妊娠・出産・子育てに関する漢方経験も多数あります。
福岡RKBラジオ「みず堂のなるほど漢方塾」には”優しいあかね先生”として出演しています。
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