抗がん剤の副作用③吐き気・嘔吐の漢方薬の使い分け

2017年9月15日

癌と漢方

抗がん剤の副作用③吐き気・嘔吐の漢方薬の使い分け

2017/4/24 日経新聞より

「漢方薬、がん治療に活用 副作用和らげ減薬に」という記事が掲載されました。

漢方薬を抗がん剤の副作用や高齢者医療などに効果的に使おうと、続々と国の実行計画や研究会が発足しています。

記事内では、下半身の冷えで抗がん剤治療を続けられなくなった方が牛車腎気丸を飲んで続けられるようになった例や、咽頭がんの放射線治療の副作用で唾液が出にくくなった方が麦門冬湯を飲んで改善した例などが紹介されています。

一方で、最後には全ての医科系大学で漢方に関する講義が行われているものの、漢方医学の専門家が教えるケースはまだ少なく、専門的な人材の育成が課題と問題提起もしてあります。

漢方薬の正しい使い方

漢方薬には漢方薬の見立てがあり、西洋医学とは全く違うことに私たち漢方薬剤師も最初はとても驚きました。

ザ・理系の頭には、なんとも曖昧な東洋医学の見立てが、とても難解で、怪しく感じたものです。

木を見て森はわからない西洋医学の頭をまるっきり、東洋医学の頭「森を見るけど木のことはよくわからない」に変える必要があります。

現在臨床で使われている漢方薬も、どうしても「この症状にはこの漢方」「この病気にはこの漢方」という西洋医学的使われ方がしています。しかし、同じ症状でも、その人の体質によって違う漢方を使い、同じ病気でも全く違う漢方を使うのが本来の東洋医学です。

抗がん剤の副作用「吐き気・嘔吐」

上記のような理由で、副作用に漢方薬が使われているものの、まだまだ画一的な使い方しかされていません。

副作用軽減に良く使われている漢方薬に他にも選択肢があることを抗がん剤の副作用①手足のしびれには牛車腎気丸だけじゃない抗がん剤の副作用②口内炎には半夏瀉心湯以外にも色々~飲み方にもコツ~でご紹介してきました。

今回は「吐き気・嘔吐」に使う漢方薬です。

恐らく一番吐き気で使う漢方薬は「小半夏加茯苓湯」だと思いますが、私個人の意見としては抗がん剤治療時にはあまり出番は少ないのではないかと思っています。

小半夏加茯苓湯は妊娠中のつわりで使うファーストチョイスの漢方薬で、主に胃腸の水分を抜くものです。燥証や陰証(口の中がパサパサ、脱水など)熱証(口内炎など)には使いません。

以下に吐き気・嘔吐の時に使う漢方薬の使い分けをご紹介します。

・唾液が出る、痰が多く出る、胸の痞えなどがあれば小半夏加茯苓湯

・唾液が出る、痰が多く出る、食後苦しまずに吐く、水を吐く、げっぷ、喉の痞え感・閉塞感があれば茯苓飲合半夏厚朴湯

・唾液が出る、痰が多く出る、食後の眠気、手足の冷え、下痢・便秘、膨満感があれば六君子湯

・長引く下痢、口渇、唇乾燥、手足のほてり、むくみがあれば参苓白朮散

・口内炎、お腹がゴロゴロなる、下痢、げっぷがあれば半夏瀉心湯・生姜瀉心湯・甘草瀉心湯

・口渇、唇乾燥、不安感、動悸、不眠、汗を異常にかく場合は柴胡桂枝乾姜湯

・疲労倦怠感が強い、微熱、やる気がない、貧血の場合は補中益気湯

精神的嘔吐にも漢方薬は有効

特に、茯苓飲合半夏厚朴湯・半夏瀉心湯・生姜瀉心湯・甘草瀉心湯・柴胡桂枝乾姜湯・補中益気湯は精神的な吐き気にも大変有効です。

胃腸の働きを整えておくことは、抗がん剤治療の効果やその後の生存率にも大きく影響すると思います。

抗がん剤治療中に限らず、食事がとれなくなると、人間は急激に弱っていきます。それが分かっていながら食べられないご本人が一番辛いと思いますが、食事を頑張って作っていらっしゃるご家族の辛さも想像に難くありません。

実は200種類以上ある漢方薬の中で、一番種類が多いのは胃腸症状に使うものです。上記に挙げた以外にも色々漢方薬はありますので、1つ飲んで効果がなかった場合でも、あきらめずにご自分に合ったものを探してみてください。

 

※関連記事

抗がん剤の副作用①手足のしびれには牛車腎気丸だけじゃない

抗がん剤の副作用②口内炎には半夏瀉心湯以外にも色々~飲み方にもコツ~

※ 小半夏加茯苓湯に関する記事

3人3様の妊娠悪阻(つわり)の傾向と対策


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執筆者 福田 茜
九州大学薬学部卒 漢方みず堂漢方専門相談員
病院やメーカーを経て、株式会社漢方みず堂へ入社。
3児の母でもあり、妊娠・出産・子育てに関する漢方経験も多数あります。
福岡RKBラジオ「みず堂のなるほど漢方塾」には”優しいあかね先生”として出演しています。
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