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汗と漢方〜多汗・寝汗・手汗~

2019年10月18日

自律神経失調症と漢方

汗と漢方〜多汗・寝汗・手汗~

多汗だけでなく過敏性腸症候群も治り、自信がついた!

21歳、真面目で周りに気を使いすぎてしまう、やさしい大学生のお話です。汗が気になり始めたのは中学生のとき。運動するとべたべたの汗が、顔や首、脇から出るようになりました。大学生になり、通学は自転車で駅までいき、そこから電車に乗るという生活がはじまりました。そうしたところ、自転車に乗った後、電車の中で顔から汗がふきだすようになりました。朝のラッシュ時、周りにたくさん人がいることが気になり始めてからは、どんどん汗がひどくなっていきました。

実はこの方、過去に川崎病になったことがあります。そして、過敏性腸症候群もあり、授業中にお腹が痛くなったり、下痢が一週間続いたりすることがあります。緊張しやすい性格は昔からだそうで、気を使いすぎてしまい、友人関係も面倒になってしまうことがありました。

体質的には、体の潤いが不足しているタイプ。完治していますが、川崎病もこの体の潤い不足が原因になったのだと推察できます。漢方は体の潤いを補うことで、自律神経の異常な興奮をおさえ、汗を抑える効果のあるものをのんでいただきました。のみはじめて10日くらいで少し効果がではじめ、2ヵ月後のゼミの発表会では緊張したにもかかわらず、汗が気になる事はありませんでした。お腹の調子も安定するようになり、何よりも自分に自信がもて、気持ちが前向きになったことが何よりも嬉しいとお話しくださいました。

そして、今まででは考えられなかった大人数の前での発表をしたり、インターンシップや就職活動も前向きに取り組めました。そして、希望する会社に就職が決まり、大変喜んでいました。

 

漢方みず堂杏林堂薬局ピーワンプラザ天王店 村上信久

汗の働き

エクリン汗腺からの発汗は、体温調節機能、湿度保持機能だけでなく、最近では細菌、ウイルスなどの侵入を防御する自然免疫機能が注目されています。

漢方でも汗に深く関わりのある「衛気」は防御機能のことで、昔から汗と病原菌などの闘う抵抗力とは関係しています。

西洋医学的な多汗症の分類・病態・疫学

多汗症には、全身性と局所性、またそれぞれに原因疾患のある続発性と、原因のわからない原発性があります。

2010年、原発性局所多汗症についての診断・診療ガイドラインが作成されています。

 

多汗症分類2

原発性局所多汗症診療ガイドライン2015年改訂版より改変

掌蹠多汗症(手のひら・足の裏)

手のひらや足の裏にはエクリン汗腺が多いところですが、多汗症の人と正常の人とでは、その個数や分布、形状に差はありません。この場所の発汗は精神性発汗です。症状の重い場合、手足は絶えず湿って指先が冷たく、紫色調を帯びていることがあります。これは発汗神経だけでなく、血管運動神経も亢進しており蒸散と血管収縮により皮膚温度が低下したためと考えられています。発汗量は昼間に多く、覚醒時に増加しますが、大脳皮質の活動が低下する睡眠中は発汗は停止しています。

腋窩多汗症(脇の下の汗)

脇の下は温熱性発汗と精神性発汗の両方が共存する特殊な環境です。手のひらや足の裏の多汗症を伴っていることもあります。

頭部・顔面多汗症

男性に多く、長期間持続し、憎悪していくことがあります。髪が濡れ汗が滴り落ちるほどの発汗は、通常数分以内に収まるが、数時間から1日中続くこともあります。熱いものの飲食・情緒的ストレスによって発汗します。

また、原発性局所多汗症診療ガイドライン2015年改訂には、「原発性多汗症の特徴として、社会的な活動範囲が広く、生産性のある年代の罹患率が非常に高いことが挙げられる。患者は精神的な苦痛を受けており、この疾患では恥ずかしいといったような精神的要素が多くの患者に見られる。患者の医療機関への受診率は6.3%であり、疾患概念と治療についての診療ガイドラインの普及がさらに広まることが望まれる」と記載されています。

西洋医学的な治療法

塩化アルミニウム水溶液の外用

全ての原発性局所多汗症に対して、第一選択となります。継続して使用することで、表皮内の汗管がダメージを受け続け、分泌細胞の変性が起こり分泌機能を失うという器質的な機序が考えられています。2〜4週間ほどで効果が現れる場合もありますが、個人差も大きく、半年〜数年使用を続けないと効果がないこともあります。副作用で、塗った部位に刺激性の接触皮膚炎が出ることがあります。半数くらいの人に出たという文献もありますが、使用回数を減らす(または中止する)ことや、ステロイド軟膏の外用で軽快します。

 

○手のひら・足の裏・・・20%~50%を単純塗布/重症時はODT療法(大量に塗布した後ゴム手袋やラップなどで覆って就寝し、翌朝洗い流す)

○わきの下・・・10~35%を単純塗布/重症時はODT療法

○顔・頭部・・・10~20%を単純塗布(刺激が強く出やすい部分であるため、低濃度。粘膜への塗布は避け、接触性皮膚炎に注意が必要)

A型ボツリヌス毒素の局注

腋窩に対して、国内外で推奨度が高く、2012年より保険適用となりました。一方で、手のひら・足の裏・顔や頭部に関しては注射の際の痛みのコントロール方法や投与量の見解が統一されておらず、日本のみならず欧米でも保険適応にはなっていません。

ボトックス®は原発性腋窩多汗症患者の96.2%において発汗重量を50%以上減少させたという報告もあります。 (大嶋雄一郎ほか. 西日本皮膚科. 2013;75:357-364)

イオントフォレーシス

手のひら、足の裏には非常に有効な治療法です。汗の多い手のひら、足のうらを水道水の入った容器の中に浸し、10~20mAの直流電流を流す方法です。1回30分の通電を8~12回行うと汗の量が減ってきます。治療効果を維持するために、その後も1週間に1~2回行うこともあります。作用機序として通電することにより生じる水素イオンが汗の出口を障害して汗を出にくくするのではないかといわれております。

胸腔鏡下胸部交感神経遮断術(ETS)

手のひらの多汗症に対して主に行われます。脇の下を3か所ほど切って、背骨近くの交感神経の繊維を見つけて切断します。傷は極めて小さく、負担は少ないです。根治的な治療として行われることも多いですが、ガイドラインにはETSが有効であるという文献が少なく、合併症の存在も無視できないとの記載があります。主な合併症は代償性発汗です。ほぼ全員に起こります。これは、胸や腰、腹、大腿部などの汗が多くなるという現象です。代償性発汗の程度は個人差が大きく、予測は不可能です。また、術後に手のひらが乾燥しひび割れができるなどということもあります。極めて稀ではありますが、心拍数減少や不整脈など心臓へ影響ができることもあるようです。

 

 中医学で汗とは?

 汗血同源・汗は心の液

中医学では「汗」というものを非常に重要視しています。例えば、筋肉を温め潤し、皮膚を健康に潤しているのは、汗液の為すところです。その汗液は津液(水分)の一部です。また、津液は血の一部でもあることから、「汗血同源」といわれています。また、血は血脈を主る「心」に属しているので、「汗は心液なり」ともいわれます。大量に汗をかくということは、津液、血液を損なうのです。また急激に津液を失うと、直接に筋肉に影響し、痙攣を引き起こしたりするのですが、これはよくスポーツ選手にみられます。ですので、女性に多い「血不足」タイプの方が大量発汗すると、よくないことがあります。そういう方が、流行りのホットヨガやサウナなどを日常的に行うのはあまりおすすめできません。

汗は陰陽のバランスが鍵

漢方では陰陽という考え方があります。万物すべての物・現象は、「陰」と「陽」の相反するものから成り立っているという考え方です。例えば、男(陽)と女(陰)とか、表(陽)と裏(陰)などです。人間の体をこの考え方でみると、「気」は「陽」、「血」や「津(水)」は「陰」となります。陽が多い方がよいというわけではなく、陰陽のバランスがとれていることが健康だけでなく、すべてにおいて大事です。

気血水

 

汗は津液(陰)に属していますが、汗の分泌と排泄は気(陽)の推動作用(動かす作用)と固摂作用(漏れ出ないようにコントロールする作用)に依存しているので「陰と陽、加わりて汗を為す」といわれています。西洋医学的に発汗は体温調節のためですが、中医学的にも、通常の生理的な状態において、陰陽のバランスを取るために発汗します。そのバランスが崩れることで汗の異常が起こるため、漢方での汗の治療は陰陽の調節をはかる必要があります。

中医学的な多汗の原因と治療方針

衛気虚

体の表面を守ってくれている「気」を「衛気(えき)」といいます。この衛気には防御作用があり、ウイルスや細菌、寒さ暑さから身を守ってくれています。また、体の必要なものが漏れ出さないよう守る作用(固摂作用)もありますので、毛穴の開け閉めとも関係しています。衛気が不足すると、汗が漏れだすように出てきます。そのほかにも、風邪を引きやすく、長引く傾向にあります。

<代表処方>

・補中益気湯:気を補う作用がとても強い。

・防已黄耆湯:気を補うだけでなく、水分代謝も高める。

・八味地黄丸/六味地黄丸:衛気の原料となる「腎」の力を高める。

営衛不和

陰陽のバランスが崩れた状態です。「営気」という全身を滋養し潤す作用のある気と、「衛気」という防御機能や体温調節機能などを行う気はお互いのバランスが取れてはじめて機能します。汗腺の開け閉めなどもこのバランスが重要になり、乱れると悪寒がしたり、蕁麻疹が出たりすることもあります。

<代表処方>

・桂枝加竜骨牡蠣湯:不眠や動機、不安感など精神的な症状を伴うものに。

・桂枝加黄耆湯:体力が落ちていて風邪をひきやすい方に。

陰虚火旺

体の水分や血が不足すると、陰陽のバランスが崩れ、「陰虚」という状態になります。そうすると相対的に「陽」が多くなってしまうため、体にくすぶった「虚火」が生じます。この虚火の熱が体の水分を体外へ押し出すため汗が出ます。昼間陽気が体表面を巡っているのに対して、夜間寝ている間は陽気は内をめぐるため、夜間は熱がこもりやすくなり、寝汗(盗汗)となります。

<代表処方>

・知柏地黄丸:皮膚や便などが乾燥傾向にあり、泌尿器系のトラブルを伴うものに。

裏熱

体の内側に熱がこもっている状態です。熱がこもる原因は様々あり、それによって対処方法も違います。陰虚火旺も裏熱のひとつです。他には、飲食の不摂生などで汚れから発生した熱(湿熱)や、ストレスがかかり鬱滞したところから発生した熱(肝鬱化火)があります。熱と水分の偏りの両方があると、多汗になりやすいため、湿熱は特に症状がひどく、なかなか治りにくいです。また、精神的なものも熱を発生させる原因になりやすく、また多汗症であること自体がストレスとなり、悪循環になってしまいます。熱は上(頭)や末端(手・足)に放出されやすいため、頭や手足だけの限局した場所に汗をかくことも。

<代表処方>

・竜胆瀉肝湯:粘っこい汗であることが多く、口が粘りやすい方に。

・茵蔯五苓散:余分な水分を多く溜まっていて、下痢や軟便傾向の方に。

・柴苓湯:肝鬱化火と湿の貯留の両方に。貧血傾向や体力低下気味の方は注意が必要です。

・白虎湯:裏熱をとる力が優れています。熱感の強い方に。

よく使われる生薬

黄耆

漢方の世界では一般的に、衛気(体の表面を守る働きのある気。水分など必要なものが漏れ出ないようにする働きもある。)を補うものとして「黄耆」という生薬をよく用います。黄耆は水分代謝も高めるため、衛気の不足による多汗には非常によく用いられます。(代表処方・・・防已黄耆湯、桂枝加黄耆湯、補中益気湯など)

しかしながら、衛気虚の多汗症なら、猫も杓子も「黄耆」というわけでありません。黄耆は主に「脾」と「肺」に働きかけます。衛気が正常に働くためには、「腎」の気を原料にし、「脾」で消化した食物から栄養を受け、「肺」のエネルギーにより分布されなければならず、腎が主役になります。黄耆の入っている処方で治らない時は、「腎」の力を補うことも考えなければなりません。

竜骨や牡蠣

「竜骨」は大型哺乳動物の化石化した骨で、「牡蠣」はカキの殻です。この二つは、漢方的に味が渋いとされていて、渋味で収斂させ、汗などが漏れ出ないようにする働きがあります。また、神経を安定させる作用もあるため、精神的なものを伴う多汗にはよく使用されます。(代表処方・・・柴胡加竜骨牡蛎湯、桂枝加竜骨牡蠣湯)

石膏

体にこもった熱を取る力に優れています。体にこもった熱が原因で大量の汗が噴き出すような場合で、同時に胸苦しさや口や喉が渇いて大量の水を飲みだがるなどの症状がある場合によく用いられます。主に呼吸器系統(汗をつかさどる皮膚は漢方では呼吸器系統に属します)、胃の熱を取ります。胃が冷えていて、少食の方にはあまり用いない方が良い生薬です。 (代表処方・・・白虎湯、白虎加人参湯、麻杏甘石湯)

全身から整えることが大事!

発汗は自律神経とも深いつながりがあります。その乱れは、どこかで頑張りすぎていたお体の声かもしれません。じっくりご自身と向き合っていただきたいと思います。

 

 

参考文献

[詳解]中医基礎理論 東洋学術出版社 著:劉燕池、浅川要他


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執筆者 田頭 哉子
薬剤師・漢方みず堂漢方専門相談員
漢方に出会って、考え方や人生観がとても良い方向へ変わりました。
病院やメーカーで勤務していたこともあって、西洋医学と中医学の両面から感じることもたくさんあります。
私自身もずっと漢方をのんでおり、その実体験からや(すごく元気になりました!)、お客様との出会いから学んだことなど、少しでも皆さんの健康と幸せのためにお役にたてる情報をお伝えしていきます!

めまいと漢方~原因不明のめまいが2週間で改善!~

2019年3月20日

自律神経失調症と漢方

めまいと漢方~原因不明のめまいが2週間で改善!~

突然のグルグルめまい、そこから不調続き…

めまいでお悩みの方は少なくありません。色白で小柄な女性もその一人でした。

2週間前、胃が痛くなり一晩中眠れなかったのが不調の始まり。翌日には突然グルグルめまいがして立っていられない状態。血圧が普段より高くなっており、病院で血液検査とMRIをとったが異常はないとのこと。ひとまず処方されたお薬を飲んで、次の日はなんとか歩くことができるくらいに。3~4日経つと、グルグル感は落ち着いてきて・・・でも、代わりに別の不調が現れ始めました。疲れるとふわふわと雲の上を歩いている感じがしたり、1日中ボーっとして眠気が抜けない感じ、いつもだったら平気なことでもすぐに疲れるようになりました。そして、更年期の時にあったようなホットフラッシュも1日に10回くらい起きるようになりました。

この2週間でこんなにも色々起こるなんて、今考えると、大きなストレスがあったのが要因かもしれない…自分はまだまだ大丈夫だと思って頑張りすぎてしまったそうです。

【体質】

疲れやすい、風邪をひきやすい、寒がり、足の冷え、寝汗、肩・首・背中のこり、足のむくみ、鼻水出やすい、肌の乾燥で痒み、目の下のくま、爪が割れやすい、疲れると頭痛、口渇(熱飲)、ちょっと食べると胃が痛い、夜間尿2~3回、熟睡できない、舌:厚白苔、歯痕あり

■西洋医学的なめまいの原因

めまいの出方は2パターン。

○回転性めまい・・・自分や周りがぐるぐる回るように感じるめまい

○浮動性めまい・・・グラグラ・ふわふわ、揺れるようなめまい、立ちくらみ

 

めまいが起こる主な要因は、平衡感覚をコントロールする機能のどこかに問題が生じた時です。平衡感覚に関わるのは、位置情報をキャッチする「感覚器官」(耳、目、手足など)と、その情報を受けて指令を出す「脳」です。複数の感覚器官からの情報を処理して、平衡感覚が保たれていますが、その情報がちぐはぐな場合、「脳」は正しい平衡が分からなくなり、めまいが起こります。めまいの原因は、問題が起きている場所によって大きく3種類に分けられます。

が原因のもの・・・良性発作性頭位めまい、メニエール、前庭神経炎、突発性難聴など

が原因のもの・・・脳梗塞、脳出血、脳腫瘍など

耳や脳以外のもの・・・頚性めまい、高血圧、低血圧、貧血、肝機能障害、甲状腺機能低下、自律神経、ホルモンバランスの崩れ、心因性ショック、過労、発熱、薬剤性など

 

この中で最も多いのは、耳が原因となるめまいです。耳には、平衡感覚を感知するために特に重要な、三半規管や耳石器があります。その為、炎症や水腫など耳で何かしらの問題が起こると、めまいにつながりやすいです。一方、診断がつかないめまいも多く、20%ほどあるようです。

引用:めまいプロ めまいと上手につきあう心得

めまいの治療は、その原因となっている疾患の治療を行います。その為、治療法は様々です。

○耳が原因のもの・・・良性発作性頭位めまいでは、耳石を元の位置に戻すリハビリ。メニエールでは水腫を除く利尿剤、前庭神経炎、突発性難聴には炎症を抑えるステロイド、など。めまい発作の急性期には、前庭機能抑制薬、制吐剤、精神安定剤などめまいを鎮めるための対症療法を行う。

○脳が原因のもの・・・腫瘍や緊急の場合は外科的手術、血栓による場合は血栓溶解療法、予防に脳循環改善薬など。

■漢方的に見た「めまい」の要因

気血不足・・・気が不足すると脳へエネルギーが届かず、神経の伝達が鈍ることで、めまいを起こす。また、血不足により脳を滋養できなけれ、栄養の欠乏状態からめまいに。気不足、血不足は連動して起こることが多い。このタイプのめまいは、体力がない人に多く、活動すると悪化する。ふわふわ、くらっと倒れそうなめまい。

腎精不足・・・脳を満たす「髄液」、これは「腎精」から作られる。加齢などで「腎」の力が弱くなると、髄液を十分に届けられず、脳の働きが弱くなっていく。物忘れ、難聴、低音の耳鳴りなどと共にあらわれてくる。くらくら、ぼーっと意識が遠のくようなめまい。

痰濁中阻・・・「脾」や「肺」が代謝できずに滞った水は、どろっとした性質の「痰濁(痰湿)」となり、気血の通り道を塞ぐ。巡りが悪く、きれいな気血が脳へ届かないため、ぼんやりするめまいを起こす。「痰濁」という錘(おもり)を抱えているため、体が重だるく、頭重感、気圧変化で頭痛、胸辺りの痞え感、口の粘つきなどを伴う。「痰濁」があると嘔吐を伴う。

肝陽上亢・・・「肝」は気の巡りをコントロールするところ。興奮気味な人、ストレス、季節の変わり目など、「肝」の陰陽のバランスが崩れると、陽気が異常な急上昇に走り、血圧上昇、頭痛、のぼせ、めまい、高音の耳鳴りなど上部の熱症状を起こす。突然、立っていられないくらい激しく出るめまいが多い。

瘀血内阻・・・「瘀血」は血流の滞り。血の質も、巡りも悪い状態。血をどろどろさせる食生活や運動不足、冷え、他に、打撲など外傷でも「瘀血」が作られる。「瘀血」は気の巡りも妨げる。脳へ気血がスムーズに届かないため、めまい、立ち眩みを起こす。特定の場所に激痛が生じたり、急な体勢変化でめまいが起こりやすい。脳卒中はこのタイプ。

■症例の経過

この方は、もともと胃が強いほうではなく、体力もありませんでした。胃は飲食物を消化してエネルギーを取り込んだり、水分を捌いたりするところ。この消化吸収や分配する働きが弱い「脾虚」のために、水分がうまく代謝できず、余分な水が溜まりやすくなっていました。そこにストレスや疲れがのしかかり、さらに拍車をかけてしまったのでしょう。「脾」では過剰な水(痰濁)を溜め、他方では、過度のストレスが「肝」の働きを失調させ、エネルギーの流れを逆流させた結果(肝陽上亢)、痰濁を頭部へと押し上げ、血圧上昇とともにめまいを起こしたのだと思います。めまいが落ち着いた後も、頭部に残った痰濁は、血流を妨げて、ふわふわ感、眠気、ぼーっとする感じを招いたり、ホットフラッシュの汗としてあふれ出る元になっていました。

そこで、「脾」の水分代謝を助け、「肝気」の流れを下へと戻す働きがある漢方を飲んでいただいたところ、2週間後には、めまいも疲れもホットフラッシュもすっかり良くなりました。

 

症状が出てから長引かせずに早めに漢方を飲んでいただいたことで治りも早かったのだと思います。不調は、体からの「ヘルプ」のサイン。放っておかずに早めの対処が大切です。

 

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執筆者 星 知美
薬剤師・漢方みず堂漢方専門相談員

心が変わると身体も変わります。
それを日々感じます。

少陽枢機不利(しょうようすうきふり)の自律神経失調症

2018年4月24日

自律神経失調症と漢方

少陽枢機不利(しょうようすうきふり)の自律神経失調症

なんとなく不調が気になる

40代の女性の方がいらっしゃいました。「ここ最近、眠たいけど、ぐっすり眠れない。」「今日は眠れなそう・・と一度思ってしまうと、眠れなくなってしまう。」「特に何かあった訳ではないが、1年程前から不安感が強くなる事があり、一人でいるとどんどん悪い事を考えてしまう・・。」「身体がきつくなってくると、ドッと重くなり、何もしたくなくなる。」「長くはないけど毎日動悸があり、気になりだすとずっと気になる。」「緊張をすると頭痛がでる。」

色々な不調が重なり、なんだか調子が悪いという状態が続いていらっしゃいました。症状をよくしたい、というよりも、一番の目標としては「スッキリしたい。」というのがお望みでした。

体質としては、すこし貧血気味(ふらつき)、暑がり寒がり両方、足が冷える、目の下のくま、あざができやすい、汗かき、肩こり、蕁麻疹が出やすい、頭重感、ボーとする、口渇く(冷飲)、春には鼻づまり・くしゃみ、お通じは硬い軟らかいどちらもということでした。

いわゆる不定愁訴

このような不定愁訴は、春になるととても多くなる症状の一つです。病院に行けば「自律神経失調症」と言われたり、閉経時期に重なると、更年期障害でしょうと言われたりします。

漢方にはこのような不定愁訴に用いる漢方薬がたくさんあります。どんな漢方薬を使うか・・・考えた時にまず判断するのは「少陽枢機不利(しょうようすうきふり)」があるかどうかです。

考え出すと眠れない、気になりだすとずっと気になる動悸、緊張時の頭痛、暑がりと寒がりの寒熱交錯、口の渇き、身体が重いなどは典型的な「少陽枢機不利(しょうようすうきふり)」と言います。水の通り道である三焦が渋滞してしまって、その通り道の先々で色々な症状が出ます。この場合、いわゆる「柴胡剤」というものを使います。

あとは、柴胡剤の中からその他の体質に合わせて適切な漢方薬を選択します。

経過

漢方をスタートするにあたり、「10代の頃に一度漢方を服用した事がありますが、その時はあまりに美味しくなく続けられなくて・・。」と心配をされていましたが、飲みにくいとおっしゃりながらも頑張って毎日服用して下さいました。

そして、2週間後。早くも眠れるようになり、朝がスキッとする!こんなにすぐ効果があるんですね!?と驚かれていました。動悸も少し減ってきたような・・と睡眠に関して以外も良い兆しがでられていました。

その後引っ越しなど環境の変化があると頭痛が出られたり、寒さが苦手な方なのでインフルエンザで体調を崩してしまったり・・とお身体の調子に波はあられましたが、3ヶ月後には寝つきもよく、夜に目が覚める事も減り、元気を少しずつ取り戻されました。

これからももちろん、体調の良い日、悪い日はあると思いますが、少しでもその波が小さく毎日を楽しくお過ごしいただきたいです。

 

漢方みず堂溝上薬局空港通り店 廣尾 なつみ

 

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執筆者 漢方みず堂
株式会社漢方みず堂は福岡、北九州、佐賀、熊本、那覇、浜松に展開する西日本最大の漢方相談薬局です。
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