認知症と漢方 の記事一覧

徘徊などの周辺症状は春に要注意

2016年2月22日

認知症と漢方

徘徊などの周辺症状は春に要注意

徘徊による行方不明者2年連続1万人超え

警察庁生活安全局生活安全企画課の発表によると平成26年に認知症が原因で行方不明になったとして家族らから警察に届けられたのは1万783人。うち男性6130人、女性4653人。前年より461人(4.5%増)多く、2年連続で1万人を超えていることがわかりました。

徘徊は、認知症の中期になるとよく見られる症状です。外に出れば他人を巻き込む可能性もあり、介護者にとって重大な周辺症状です。

介護の現場では、認知症の患者さんは季節の変わり目と夕方に不安定になりやすいと言われています。

春は「肝」の季節

古代中国に起源を持つ哲理として五行説があります。その五行説でいうと春は「肝」の季節です。春は肝が亢進しやすくなります。

肝臓は解毒機能を担いますので、デトックスには最適の季節。ダイエットにはもってこいです。一方で、肝は単に現代医学でいう肝臓をさすだけではなく、気を全身にめぐらす働きも担っています。すなわち自律神経の機能です。肝が亢進すると交感神経が刺激され、のぼせ・めまい・睡眠障害・便秘などが起きやすくなります。

徘徊をはじめ、妄想・幻覚・暴力・睡眠障害・抑うつ・うわごと・ふらつきなど、認知症の周辺症状は自律神経の乱れが大きく関わるため、春先はこのような症状が出やすい季節です。

抑肝散は春の漢方

認知症の周辺症状に効果がある有名な漢方に抑肝散があります。字の如く「肝」を抑える薬です。より専門的な解説をすると、抑肝散は体の中に起きた「風」を鎮める漢方です。肝が乱れると、体の中に風が生じ、まさに風のようにふわふわと上の方に上がってくる症状、めまい・ふらつき・興奮・のぼせなどが起きます。そんな時、抑肝散は上がってきているものを下げて鎮めていく効果があり、まさに春にぴったりの漢方です。

※抑肝散については認知症の漢方は抑肝散だけではない!、「風」についてはめまい、耳鳴り、頭痛には熄風剤(そくふうざい)で詳しく解説しています。

漢方的春の過ごし方

漢方の古典「黄帝内経(こうていだいけい)」には、春は花や草木の芽が吹き、それまで静かにしていた動物や昆虫が外に飛び出し、川や海に住む生き物まで自然の全てが活き活きと栄えてくる季節なので、春の3ヵ月を発陳(はっちん)と言って、その養生法が次のように述べられています。
「この季節には、少し遅く寝て少し早く起き、楽な格好で外に出てゆったりと歩き、体をのびやかにし、春に芽生えた万物と同じように、心身ともに活き活きと、活動的な気持ち、あるいは活動するのがいい。これが春の季節に調和した養生法である。 もし、養生法に逆らって、活動しなくて気持ちが沈んだままだと、五行による春に配当する臓器である肝を傷害し、夏になっても汗をかかず寒性の病(冷え症)にかかりやすくなる。」

春は特にのびのびと

認知症の中期からは介護者の負担が大きくなってきます。春という季節の心構えを事前にしておくと少しは心の余裕が生まれるかもしれませんね。徘徊はつい強く制止してしまったり怒ってしまいがちです。本人はなぜ怒られているのかわかない、忘れてしまうものの無意識の中で嫌なことをされたという感覚が残り、徘徊をまた繰り返すという悪循環になることもあります。ストレスを与えない対応、外に出たがるようであれば家族が寄り添って短時間でも一緒に歩いてあげるなど、介護をする側も、春は特にのびのびと、を意識してみてはいかがでしょうか?

 

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執筆者 福田 茜
九州大学薬学部卒 薬剤師・漢方みず堂漢方専門相談員
病院やメーカーを経て、株式会社漢方みず堂へ入社。
3児の母でもあり、妊娠・出産・子育てに関する漢方経験も多数あります。

レビー小体型認知症と漢方

2015年11月7日

認知症と漢方

レビー小体型認知症と漢方

樋口直美さん著「私の脳で起こったこと」との出会い

最近認知症についてのテレビ番組や特集記事も多く、私自身、以前より認知症について詳しく知るようになりました。

しかし上記の樋口直美さんの本と出会い、まだまだ知らないことも多いものだと感じたことと、樋口さんがレビー小体型認知症から復活するにあたり、様々な漢方薬が有効であったことを知り、漢方を専門としている身として、大変興味深く拝読いたしました。

以下、本からの抜粋部分は赤字にしております。

レビー小体型認知症とは

”レビー小体とは、神経細胞に出来る特殊なたんぱく質です。レビー小体型認知症では、レビー小体が脳の大脳皮質(人がものを考える時の中枢的な役割を持っている場所)や、脳幹(呼吸や血液の循環に携わる人が生きる上で重要な場所)にたくさん集まってしまいます。レビー小体がたくさん集まっている場所では、神経細胞が壊れて減少している為、神経を上手く伝えられなくなり、認知症の症状が起こります。”~認知症ネットより~

昨年亡くなった人気俳優のロビンウィリアムさんも、レビー小体型認知症だったと妻のスーザンさんが告白しています。ロビンウィリアムさんはパーキンソン病と誤診されていました。「私の脳で起こったこと」の樋口直美さんも、最初はうつ病と誤診され、最終的にレビー小体型認知症と診断されるまでに約10年を要しています。その間、間違った薬物治療を受け、状態がどんどん悪化し、大変な目に遭われています。そんなにも長い月日、誤った治療を受けなければならなかったことを思うと、一医療人として、改めて人の命、人生に関わることの重大さを考えさせられました。

レビー小体型認知症の症状の一部

①薬に敏感。激しい副作用が出やすい反面、少量でも効果が出やすい。

②寝言が大きい。悪夢を見て叫ぶ。夢の通り激しく動く(初期)

③自律神経症状(血圧・脈・汗・体温・排泄などの異常)

④立ちくらみ・失神・頭痛・耳鳴り・体の痛み・だるさ・冷え等

⑤不眠・疲労感・気力低下・不安・焦躁・うつ・イライラ等

⑥意識障害・スイッチを切ったように反応が悪くなる・昼寝多い

⑦幻覚(幻視・幻聴・幻臭・痛み等の体感幻覚)は出ない人もいる

⑧パーキンソン病とほぼ同じ姿勢・小股すり足・転倒・体のこわばり(出ない人も)

樋口さんが試した漢方

うつ病と誤診され、誤った薬物治療により状態はさらに悪化。著書は日記の抜粋で進んでいくのですが、体調の波に気持ちも大きく揺さぶられている様子が分かります。

特にこれといった薬もなく、ご自身で色々と試す中、ツボと漢方とアロマの効果を実感されています。

最初に試した漢方薬は「葛根湯」背中のこわばり・痛みに良いと聞き飲んだところ、その日は寝込むことがなく、それから漢方の専門医を受診する決意をされます。

しかし、そこからなかなかぴったりな漢方に出逢えません。有名な「抑肝散」「加味帰脾湯」「加味逍遥散」「補中益気湯」はことごとくだめ。実はこれらの漢方薬は非常に適用範囲が広く、万人受けしやすい漢方です。しかし、樋口さんの場合飲むと一気に低血圧になったりして、上記レビーの特徴①にあるように、一般的には考えにくい副作用がテキメンに現れます。

そんな中、ようやく出逢えたのが「真武湯」意識障害が出た時に、真武湯を2/3量飲むと、寝込むことなく元気になる。それからしばらくは真武湯とリバスタッチ(アルツハイマー型認知症の薬)の2種類で薬物治療を続けます。

そんな真武湯も数年経つ頃には効かなくなり、再度他の漢方薬を探すことになります。そうやってその時々で合う漢方を苦労して見つけ、現在では認知機能は正常に回復していらっしゃるそうです。

漢方的視点からみると

ことごとくだめだった漢方薬「抑肝散」「加味帰脾湯」「加味逍遥散」と効果があった漢方薬「葛根湯」「真武湯」の絶対的な違いは「熱・寒」です。前者3つは「熱証」に用いる漢方薬。後者は「寒証」に用います。樋口さんは平熱が35度台、とにかく冷えが酷い方なので、典型的「寒証」なんだろうなと思って本書を読み進めました。もちろん専門医にかかってあり、私が口を出すまでもなく、専門医も分かっていらしたと思います。ここで樋口さんが飲んだ漢方が、他の人にも合うかというと、そうではありません。漢方では病名は関係なく、症状・体質に合わせて漢方薬を選びます。一言で認知症と言っても、症状体質は人それぞれで、とにかく自分に合ったものを飲むことが大切です。漢方を専門としている私たちも、合う漢方をすぐに当てられればいいのですが、樋口さんのようになかなか難しい場合もあるのが現実です。飲んでみないと分からないという博打要素があるのが漢方です。

そしてここまで薬に過敏な方の場合、予想もしない激しい副作用が出るので、合う漢方薬に辿り着く前に諦めてしまう方も多いのではないでしょうか。こうやって、合う漢方薬に辿り着けたのは、専門医との信頼関係と、樋口さん自身の良くなりたいという強い意志のお陰だったのだと思います。

もし、樋口さんと同じような症状でお悩みの方が、何かのきっかけでこれを読み、参考にしていただけたら幸いです。

 

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執筆者 福田 茜
九州大学薬学部卒 薬剤師・漢方みず堂漢方専門相談員
病院やメーカーを経て、株式会社漢方みず堂へ入社。
3児の母でもあり、妊娠・出産・子育てに関する漢方経験も多数あります。

軽度認知障害(MCI)の段階で漢方を飲もう!

2015年9月4日

認知症と漢方

軽度認知障害(MCI)の段階で漢方を飲もう!

軽度認知障害(MCI)とは?

認知症の前段階と言われる状態で、MCIの約半数が、認知症へ進行すると言われています。

具体的には、同じことを何度も繰り返して言ったり、同じものをたくさん買い込んでしまったり、物の置き場所がわからなくなったり、認知症とほぼ同じ症状ですが、日常生活には支障がなく、検査をしても認知症ではないと診断されます。

初期予防のむずかしさ

家族に受診を勧められてから、実際に受診するまでの間に約9か月の期間が開くと言われており、初期段階、特にMCIの段階で受診する方は現実には少ないと思われます。しかし、このMCIの段階で、できる対策を始めることが認知症への進行を予防・遅らせるために大変重要なことです。

MCI・認知症の予防

認知症は生活習慣病との関係が深いことが分かっています。ということは、生活習慣をただすことは何よりも大切です。

生活習慣病は血管をもろくさせるため、脳血管性の認知症のリスクが高まります。

さらに、アルツハイマー型認知症の原因物質アミロイドβタンパクはインスリンとの関係が深く、糖尿病の方は要注意です。

漢方では心食動休環の養生を基本とします。認知症の場合、この心食動休環に加え、脳を鍛える・休めるということが重要です。

脳を鍛える

1、2~3日遅れの日記をつける(エピソード記憶)

2、料理は何品か並行して作る(注意分割機能)

3、効率の良い買い物の計画を立てる

麻雀や将棋などのゲームをする(計画力)

脳を休める

30分未満の昼寝をすることが大変有効と言われています。先日テレビで見た若年性アルツハイマーの方も、昼食後必ず30分ほどお昼寝をしていらっしゃいました。

また、起床後2時間以内に太陽の光を浴びることで脳のスイッチが入ります。こういったメリハリも、規則正しい生活の中で意識したいところです。

漢方のすすめ

日常生活でできることを取り入れるのはもちろん、もっと積極的に予防に取り組みたい方には予防医学の真骨頂、漢方をぜひともおすすめします。

詳しくは「認知症予防に漢方!」で解説しています。

ここまで私が力説するのには、祖母(86歳)が実際に漢方で物忘れが激減したことにあります。

ごく初期の段階で積極的に予防に取り組むことで、本人はもちろん、家族にとっても代えがたい健康な時間が増えると思います。

 

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執筆者 福田 茜
九州大学薬学部卒 薬剤師・漢方みず堂漢方専門相談員
病院やメーカーを経て、株式会社漢方みず堂へ入社。
3児の母でもあり、妊娠・出産・子育てに関する漢方経験も多数あります。
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