田頭 哉子 が投稿した記事一覧

汗と漢方〜多汗・寝汗・手汗~

2019年10月18日

自律神経失調症と漢方

汗と漢方〜多汗・寝汗・手汗~

多汗だけでなく過敏性腸症候群も治り、自信がついた!

21歳、真面目で周りに気を使いすぎてしまう、やさしい大学生のお話です。汗が気になり始めたのは中学生のとき。運動するとべたべたの汗が、顔や首、脇から出るようになりました。大学生になり、通学は自転車で駅までいき、そこから電車に乗るという生活がはじまりました。そうしたところ、自転車に乗った後、電車の中で顔から汗がふきだすようになりました。朝のラッシュ時、周りにたくさん人がいることが気になり始めてからは、どんどん汗がひどくなっていきました。

実はこの方、過去に川崎病になったことがあります。そして、過敏性腸症候群もあり、授業中にお腹が痛くなったり、下痢が一週間続いたりすることがあります。緊張しやすい性格は昔からだそうで、気を使いすぎてしまい、友人関係も面倒になってしまうことがありました。

体質的には、体の潤いが不足しているタイプ。完治していますが、川崎病もこの体の潤い不足が原因になったのだと推察できます。漢方は体の潤いを補うことで、自律神経の異常な興奮をおさえ、汗を抑える効果のあるものをのんでいただきました。のみはじめて10日くらいで少し効果がではじめ、2ヵ月後のゼミの発表会では緊張したにもかかわらず、汗が気になる事はありませんでした。お腹の調子も安定するようになり、何よりも自分に自信がもて、気持ちが前向きになったことが何よりも嬉しいとお話しくださいました。

そして、今まででは考えられなかった大人数の前での発表をしたり、インターンシップや就職活動も前向きに取り組めました。そして、希望する会社に就職が決まり、大変喜んでいました。

 

漢方みず堂杏林堂薬局ピーワンプラザ天王店 村上信久

汗の働き

エクリン汗腺からの発汗は、体温調節機能、湿度保持機能だけでなく、最近では細菌、ウイルスなどの侵入を防御する自然免疫機能が注目されています。

漢方でも汗に深く関わりのある「衛気」は防御機能のことで、昔から汗と病原菌などの闘う抵抗力とは関係しています。

西洋医学的な多汗症の分類・病態・疫学

多汗症には、全身性と局所性、またそれぞれに原因疾患のある続発性と、原因のわからない原発性があります。

2010年、原発性局所多汗症についての診断・診療ガイドラインが作成されています。

 

多汗症分類2

原発性局所多汗症診療ガイドライン2015年改訂版より改変

掌蹠多汗症(手のひら・足の裏)

手のひらや足の裏にはエクリン汗腺が多いところですが、多汗症の人と正常の人とでは、その個数や分布、形状に差はありません。この場所の発汗は精神性発汗です。症状の重い場合、手足は絶えず湿って指先が冷たく、紫色調を帯びていることがあります。これは発汗神経だけでなく、血管運動神経も亢進しており蒸散と血管収縮により皮膚温度が低下したためと考えられています。発汗量は昼間に多く、覚醒時に増加しますが、大脳皮質の活動が低下する睡眠中は発汗は停止しています。

腋窩多汗症(脇の下の汗)

脇の下は温熱性発汗と精神性発汗の両方が共存する特殊な環境です。手のひらや足の裏の多汗症を伴っていることもあります。

頭部・顔面多汗症

男性に多く、長期間持続し、憎悪していくことがあります。髪が濡れ汗が滴り落ちるほどの発汗は、通常数分以内に収まるが、数時間から1日中続くこともあります。熱いものの飲食・情緒的ストレスによって発汗します。

また、原発性局所多汗症診療ガイドライン2015年改訂には、「原発性多汗症の特徴として、社会的な活動範囲が広く、生産性のある年代の罹患率が非常に高いことが挙げられる。患者は精神的な苦痛を受けており、この疾患では恥ずかしいといったような精神的要素が多くの患者に見られる。患者の医療機関への受診率は6.3%であり、疾患概念と治療についての診療ガイドラインの普及がさらに広まることが望まれる」と記載されています。

西洋医学的な治療法

塩化アルミニウム水溶液の外用

全ての原発性局所多汗症に対して、第一選択となります。継続して使用することで、表皮内の汗管がダメージを受け続け、分泌細胞の変性が起こり分泌機能を失うという器質的な機序が考えられています。2〜4週間ほどで効果が現れる場合もありますが、個人差も大きく、半年〜数年使用を続けないと効果がないこともあります。副作用で、塗った部位に刺激性の接触皮膚炎が出ることがあります。半数くらいの人に出たという文献もありますが、使用回数を減らす(または中止する)ことや、ステロイド軟膏の外用で軽快します。

 

○手のひら・足の裏・・・20%~50%を単純塗布/重症時はODT療法(大量に塗布した後ゴム手袋やラップなどで覆って就寝し、翌朝洗い流す)

○わきの下・・・10~35%を単純塗布/重症時はODT療法

○顔・頭部・・・10~20%を単純塗布(刺激が強く出やすい部分であるため、低濃度。粘膜への塗布は避け、接触性皮膚炎に注意が必要)

A型ボツリヌス毒素の局注

腋窩に対して、国内外で推奨度が高く、2012年より保険適用となりました。一方で、手のひら・足の裏・顔や頭部に関しては注射の際の痛みのコントロール方法や投与量の見解が統一されておらず、日本のみならず欧米でも保険適応にはなっていません。

ボトックス®は原発性腋窩多汗症患者の96.2%において発汗重量を50%以上減少させたという報告もあります。 (大嶋雄一郎ほか. 西日本皮膚科. 2013;75:357-364)

イオントフォレーシス

手のひら、足の裏には非常に有効な治療法です。汗の多い手のひら、足のうらを水道水の入った容器の中に浸し、10~20mAの直流電流を流す方法です。1回30分の通電を8~12回行うと汗の量が減ってきます。治療効果を維持するために、その後も1週間に1~2回行うこともあります。作用機序として通電することにより生じる水素イオンが汗の出口を障害して汗を出にくくするのではないかといわれております。

胸腔鏡下胸部交感神経遮断術(ETS)

手のひらの多汗症に対して主に行われます。脇の下を3か所ほど切って、背骨近くの交感神経の繊維を見つけて切断します。傷は極めて小さく、負担は少ないです。根治的な治療として行われることも多いですが、ガイドラインにはETSが有効であるという文献が少なく、合併症の存在も無視できないとの記載があります。主な合併症は代償性発汗です。ほぼ全員に起こります。これは、胸や腰、腹、大腿部などの汗が多くなるという現象です。代償性発汗の程度は個人差が大きく、予測は不可能です。また、術後に手のひらが乾燥しひび割れができるなどということもあります。極めて稀ではありますが、心拍数減少や不整脈など心臓へ影響ができることもあるようです。

 

 中医学で汗とは?

 汗血同源・汗は心の液

中医学では「汗」というものを非常に重要視しています。例えば、筋肉を温め潤し、皮膚を健康に潤しているのは、汗液の為すところです。その汗液は津液(水分)の一部です。また、津液は血の一部でもあることから、「汗血同源」といわれています。また、血は血脈を主る「心」に属しているので、「汗は心液なり」ともいわれます。大量に汗をかくということは、津液、血液を損なうのです。また急激に津液を失うと、直接に筋肉に影響し、痙攣を引き起こしたりするのですが、これはよくスポーツ選手にみられます。ですので、女性に多い「血不足」タイプの方が大量発汗すると、よくないことがあります。そういう方が、流行りのホットヨガやサウナなどを日常的に行うのはあまりおすすめできません。

汗は陰陽のバランスが鍵

漢方では陰陽という考え方があります。万物すべての物・現象は、「陰」と「陽」の相反するものから成り立っているという考え方です。例えば、男(陽)と女(陰)とか、表(陽)と裏(陰)などです。人間の体をこの考え方でみると、「気」は「陽」、「血」や「津(水)」は「陰」となります。陽が多い方がよいというわけではなく、陰陽のバランスがとれていることが健康だけでなく、すべてにおいて大事です。

気血水

 

汗は津液(陰)に属していますが、汗の分泌と排泄は気(陽)の推動作用(動かす作用)と固摂作用(漏れ出ないようにコントロールする作用)に依存しているので「陰と陽、加わりて汗を為す」といわれています。西洋医学的に発汗は体温調節のためですが、中医学的にも、通常の生理的な状態において、陰陽のバランスを取るために発汗します。そのバランスが崩れることで汗の異常が起こるため、漢方での汗の治療は陰陽の調節をはかる必要があります。

中医学的な多汗の原因と治療方針

衛気虚

体の表面を守ってくれている「気」を「衛気(えき)」といいます。この衛気には防御作用があり、ウイルスや細菌、寒さ暑さから身を守ってくれています。また、体の必要なものが漏れ出さないよう守る作用(固摂作用)もありますので、毛穴の開け閉めとも関係しています。衛気が不足すると、汗が漏れだすように出てきます。そのほかにも、風邪を引きやすく、長引く傾向にあります。

<代表処方>

・補中益気湯:気を補う作用がとても強い。

・防已黄耆湯:気を補うだけでなく、水分代謝も高める。

・八味地黄丸/六味地黄丸:衛気の原料となる「腎」の力を高める。

営衛不和

陰陽のバランスが崩れた状態です。「営気」という全身を滋養し潤す作用のある気と、「衛気」という防御機能や体温調節機能などを行う気はお互いのバランスが取れてはじめて機能します。汗腺の開け閉めなどもこのバランスが重要になり、乱れると悪寒がしたり、蕁麻疹が出たりすることもあります。

<代表処方>

・桂枝加竜骨牡蠣湯:不眠や動機、不安感など精神的な症状を伴うものに。

・桂枝加黄耆湯:体力が落ちていて風邪をひきやすい方に。

陰虚火旺

体の水分や血が不足すると、陰陽のバランスが崩れ、「陰虚」という状態になります。そうすると相対的に「陽」が多くなってしまうため、体にくすぶった「虚火」が生じます。この虚火の熱が体の水分を体外へ押し出すため汗が出ます。昼間陽気が体表面を巡っているのに対して、夜間寝ている間は陽気は内をめぐるため、夜間は熱がこもりやすくなり、寝汗(盗汗)となります。

<代表処方>

・知柏地黄丸:皮膚や便などが乾燥傾向にあり、泌尿器系のトラブルを伴うものに。

裏熱

体の内側に熱がこもっている状態です。熱がこもる原因は様々あり、それによって対処方法も違います。陰虚火旺も裏熱のひとつです。他には、飲食の不摂生などで汚れから発生した熱(湿熱)や、ストレスがかかり鬱滞したところから発生した熱(肝鬱化火)があります。熱と水分の偏りの両方があると、多汗になりやすいため、湿熱は特に症状がひどく、なかなか治りにくいです。また、精神的なものも熱を発生させる原因になりやすく、また多汗症であること自体がストレスとなり、悪循環になってしまいます。熱は上(頭)や末端(手・足)に放出されやすいため、頭や手足だけの限局した場所に汗をかくことも。

<代表処方>

・竜胆瀉肝湯:粘っこい汗であることが多く、口が粘りやすい方に。

・茵蔯五苓散:余分な水分を多く溜まっていて、下痢や軟便傾向の方に。

・柴苓湯:肝鬱化火と湿の貯留の両方に。貧血傾向や体力低下気味の方は注意が必要です。

・白虎湯:裏熱をとる力が優れています。熱感の強い方に。

よく使われる生薬

黄耆

漢方の世界では一般的に、衛気(体の表面を守る働きのある気。水分など必要なものが漏れ出ないようにする働きもある。)を補うものとして「黄耆」という生薬をよく用います。黄耆は水分代謝も高めるため、衛気の不足による多汗には非常によく用いられます。(代表処方・・・防已黄耆湯、桂枝加黄耆湯、補中益気湯など)

しかしながら、衛気虚の多汗症なら、猫も杓子も「黄耆」というわけでありません。黄耆は主に「脾」と「肺」に働きかけます。衛気が正常に働くためには、「腎」の気を原料にし、「脾」で消化した食物から栄養を受け、「肺」のエネルギーにより分布されなければならず、腎が主役になります。黄耆の入っている処方で治らない時は、「腎」の力を補うことも考えなければなりません。

竜骨や牡蠣

「竜骨」は大型哺乳動物の化石化した骨で、「牡蠣」はカキの殻です。この二つは、漢方的に味が渋いとされていて、渋味で収斂させ、汗などが漏れ出ないようにする働きがあります。また、神経を安定させる作用もあるため、精神的なものを伴う多汗にはよく使用されます。(代表処方・・・柴胡加竜骨牡蛎湯、桂枝加竜骨牡蠣湯)

石膏

体にこもった熱を取る力に優れています。体にこもった熱が原因で大量の汗が噴き出すような場合で、同時に胸苦しさや口や喉が渇いて大量の水を飲みだがるなどの症状がある場合によく用いられます。主に呼吸器系統(汗をつかさどる皮膚は漢方では呼吸器系統に属します)、胃の熱を取ります。胃が冷えていて、少食の方にはあまり用いない方が良い生薬です。 (代表処方・・・白虎湯、白虎加人参湯、麻杏甘石湯)

全身から整えることが大事!

発汗は自律神経とも深いつながりがあります。その乱れは、どこかで頑張りすぎていたお体の声かもしれません。じっくりご自身と向き合っていただきたいと思います。

 

 

参考文献

[詳解]中医基礎理論 東洋学術出版社 著:劉燕池、浅川要他


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執筆者 田頭 哉子
薬剤師・漢方みず堂漢方専門相談員
漢方に出会って、考え方や人生観がとても良い方向へ変わりました。
病院やメーカーで勤務していたこともあって、西洋医学と中医学の両面から感じることもたくさんあります。
私自身もずっと漢方をのんでおり、その実体験からや(すごく元気になりました!)、お客様との出会いから学んだことなど、少しでも皆さんの健康と幸せのためにお役にたてる情報をお伝えしていきます!

後鼻漏と漢方〜3ヶ月で症状ゼロになった方の実例も〜

2018年11月13日

その他

後鼻漏と漢方〜3ヶ月で症状ゼロになった方の実例も〜

3年治らなかった後鼻漏が治った実例

56歳、働き盛りの男性。

きっかけはストレスだと感じていらっしゃいました。最初は痰がよく出るなぁと思っていたのが、だんだんとひどくなり、鼻から流れる痰を吐き出さないと気持ちが悪いし、どんどん溜まるので本当にしんどいということでした。特に仕事終わりが辛く、鼻うがいを1日4〜5回もしていました。TVCMやインターネットでみた辛夷清肺湯を半年ほど続けて飲んでいましたが、余り調子はよくならず、どうにかならないかというご相談でした。後鼻漏以外はとてもお元気な方ですが、ストレスフルな生活をなさっていて、バランスを崩している印象でした。

そこで体の汚れた水を排出しながら、ストレスによる慢性炎症を改善できる漢方を飲んでいただいたところ、1ヶ月後には、鼻うがいの回数が激減!3ヶ月後には全く気にならなくなりました。

 

漢方みず堂 赤坂店 福田学

西洋医学的な原因と治療

後鼻漏とは?

鼻の中は粘膜が覆っていて、鼻水などの粘液が1日に6リットル近くつくられます。この粘液は、粘膜の表面にある「繊毛(せんもう)」という細かいブラシのような構造によって喉の奥に送られ、私たちは知らず知らずのうちに飲み込んでいます。病気でなくても喉に鼻水や液がたまることはあり、鼻や喉を保護する体の働きです。

しかし、この仕組みがうまく働かなくなると、鼻水が増えて鼻の奥にたまったり、粘っこい鼻水が喉に落ちるという症状が現れます。これが「後鼻漏」です。

原因と治療

①副鼻腔炎や慢性副鼻腔炎(蓄膿症):副鼻腔に炎症が起き、膿としての鼻水が多量に生産される。X線検査で副鼻腔に膿が溜まっているかどうかの診断がつく。マクロライド系抗生物質(クラリスロマイシン)には鼻副鼻腔粘膜の繊毛運動活性化作用があり、カルボシステイン(去痰剤)を併用することで繊毛運動活性化が活発化される。薬物治療で改善がない場合、内視鏡下での鼻副鼻腔手術が必要。ただし、手術を行っても後鼻漏の症状が完全に消失しない場合もしばしばあり、特に鼻副鼻腔粘膜に好酸球が多い場合、手術を行っても後鼻漏は改善しないことが多いとの報告も。

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②鼻炎(アレルギー性鼻炎):X線で副鼻腔に炎症がなく、特定の原因がない場合、鼻炎として治療することも。アレルギー検査し、避けることで症状悪化も予防できる。抗アレルギー剤のうち、ロイコトリエン受容体拮抗剤(キプレス、オノンなど)が有効。

 

③上咽頭炎:風邪がきっかけだったり、アレルギーなどで上咽頭に炎症が起き、膿が発生する。慢性化することも多く、自律神経症状を伴うことも。また、腎臓病や関節炎、膠原病などと関連があるともいわれる。急性であれば抗生物質が処方されるが、慢性化した場合は塩化亜鉛塗布などが行われる(できる施設が限られている)。

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④加齢による粘膜の変化によるもの:根本的治療法は確立されていない。マスクや加湿などが有効な事も。

中医学的な原因と治療

<実証>

1、肺経風熱:鼻水は黄色か白色で、粘り気があって量が多い。鼻づまりは継続的だったり間欠的だったりする。嗅覚が低下し、鼻粘膜が発赤腫脹する。

全身では、発熱悪寒、頭痛、咳、痰なども同時に出ることがある。

肺という呼吸器を主るところは鼻と繋がっています。風熱邪毒が肺の経絡へ入り、鼻へ鬱滞すると粘膜を焼き、発症します。

代表処方・・・辛夷清肺湯

 

  • 2、胆腑鬱熱:鼻水は黄色で濁っており、粘稠、量が多く、鼻腔上部から流れ出し、臭いがあり、嗅覚が低下。鼻粘膜が腫張し発赤が顕著。激烈な頭痛があり、眉間や頬部に痛みがある。全身では喉の乾燥、耳鳴り、目の充血、睡眠不足で夢が多い、怒りやすい、などの症状も同時に見られることがある。
  • 漢方で胆は、自律神経を主る「肝」と表裏の関係といって連携しており、胆汁を貯めたり排出したりして消化吸収の一役を担っている他、胆は肝と協同して疏泄(精神情緒の活動を調節したり、気血を通じさせる)作用があります。胆の気は脳に通じていますし、胆は決断力にも関わっています。感情が抑鬱したり、怒りが過ぎたりすると、胆は疏泄ができなくなり、気が鬱して火へと変化し、胆火が上部を侵犯すると熱が脳へ移り、損傷が副鼻腔に波及して気血を焼灼すると、粘膜を灼いて腐敗させ、鼻水が発生します。

代表処方・・・竜胆瀉肝湯、荊芥連翹湯

前立腺炎・頻尿・目の充血は肝経湿熱

 

  • 3、脾胃湿熱:鼻水が黄色く濁って量が多く、鼻腔からチョロチョロと流れ続ける。ひどい鼻づまりになると嗅覚がなくなることも。鼻腔内は発赤腫張し、痛みも伴う。特に腫張が顕著。全身では、頭が重く痛みがある、体がだるい、食欲不振などの症状も出ることがある。

脾胃とは胃腸のこと。普段から酒・脂っこいもの・甘いものを好んで摂取していると湿熱(ドロドロしたお水に熱が加わったもの)が発生し、それが溜まってくると胃腸の機能を損ねます。胃腸は食べ物を消化したり水分を運んだりしていますが、その機能が失調すると、必要なエネルギーが作られない上に未消化の汚れたものがたまります。そのために湿熱が上部を蒸し、副鼻腔内に停滞して集まると、副鼻腔内の粘膜を焼灼して損傷し、鼻水が発生します。

代表処方・・・茵蔯五苓散、茵蔯蒿湯

便秘で眠れない!〜脾胃湿熱からの心火旺〜

 

<実証〜中間証>

1、肝気鬱結:症状に波があり、痰や鼻水の形状も様々。全身では、暑かったり寒かったり、胸や脇腹が張る・痛い、口が苦い、喉の乾燥、排尿異常、汗の異常など、自律神経がバランスを取れなくなった場合の症状が多く見られる。

様々なストレスが原因で、肝の疏泄機能に異常をきたし、肝気が鬱結して気滞痰凝となる。鬱から熱や火へと変化して火熱上亢となると、上咽頭や副鼻腔の粘膜を焼灼して損傷する。

代表処方・・・「柴胡」を含むいわゆる柴胡剤と呼ばれる漢方。抗炎症作用に優れる。

喉の痛みに小柴胡湯加桔梗石膏

 

<虚証>

  • 1、肺気虚寒:鼻水は白く粘り、鼻がつまる(重い場合も軽い場合もある)。風や冷えなどの刺激で悪化する。全身では、めまいや体の冷え、咳や痰などの症状が同時に出ることがある。

長患いのために体が弱くなったり、病後の栄養失調などといった原因により、肺(呼吸器系)が虚損して肺気が不足していると、防御機能が弱くなって、外からの邪毒に犯されやすくなり、邪が鼻に停留します。この鼻水は潤いを損傷したものなので、白く粘り気があって無臭です。

代表処方・・・葛根湯加川芎辛夷+肺気を補う黄耆などを配合している処方(補中益気湯など)

 

  • 2、脾気虚弱:鼻水は白くて濃く粘る、または黄色く粘稠、量は多く無臭。鼻閉が重く、嗅覚が低下し、鼻腔粘膜の腫張がひどい。全身では、体がだるくて脱力感があり、食が細くお腹が張る、便が緩い、顔色が良くないなどの症状を伴うこともある。

飲食の不摂生、過労、悩みすぎによる鬱結などのために脾胃を損傷し、脾胃が虚弱になると消化機能が失調します。そのために「気(元気)」や「血(栄養分)」などが作られなくなると、鼻は気血による栄養を失ってしまい、邪毒により長期間困窮させられると、粘膜が腐敗して濁った鼻水が分泌されるようになります。また脾が弱く水分代謝がうまくいかないと、湿(汚れた水)がたまり、それが上部に移行すると鼻水となります。

代表処方・・・参苓白朮散、補中益気湯などに湿気を取り除けるようなものをプラス

 

  • 3、肺陰虧虚:痰は粘ついて少なく、時にむせる。喉の乾燥、不快感がある。全身では頬の紅潮、手足の中心が暑くなる、精神疲労、言葉に力がないなどの症状を伴うこともある。

肺の水分が不足することで火がくすぶっていて、それが上咽頭を上炎するために炎症を起こします。加齢で起こることも多く、西洋医学的には治療が困難な場合も。

代表処方・・・麦門冬湯

毎月40度の発熱!肺陰虚で抵抗力が低下

 

4、腎陰虚損:黄白色の痰で粘っこいが量は多くない、口が渇くが多くは飲まない、喉の灼熱感や不快感がある場合も。全身では、くらくらする、かすみ目、耳鳴り、不眠、腰や膝がだるいなどの症状を伴うこともある。

腎(老化を主るところ)の水分が不足したために火を制御できなくなり、上咽頭にくすぶった火が上炎すると、粘膜が損傷し、痰を生じます。加齢で起こることも多く、西洋医学的には治療が困難といわれることも。

代表処方・・・知柏地黄丸

膀胱炎と耳鳴りの原因は同じ? 

 

 

 後鼻漏(こうびろう)には体質改善!

アレルギー性鼻炎と漢方

介護、孫の世話でストレスが溜まり体調不良

 


執筆者 田頭 哉子の画像

執筆者 田頭 哉子
薬剤師・漢方みず堂漢方専門相談員
漢方に出会って、考え方や人生観がとても良い方向へ変わりました。
病院やメーカーで勤務していたこともあって、西洋医学と中医学の両面から感じることもたくさんあります。
私自身もずっと漢方をのんでおり、その実体験からや(すごく元気になりました!)、お客様との出会いから学んだことなど、少しでも皆さんの健康と幸せのためにお役にたてる情報をお伝えしていきます!

妊活ダイエットのススメ~14.8kg減で赤ちゃんを授かれた例~

2018年10月29日

妊娠体験談

妊活ダイエットのススメ~14.8kg減で赤ちゃんを授かれた例~

ダイエットして自然妊娠した方の実例

赤ちゃんがほしいとご来店されたのは35歳のお客様。赤ちゃんを望まれて3年。中学生のころから生理不順で30歳からはピルで生理を起こしていました。ピルをやめると生理は3か月に1度。そしてご来店時には、排卵誘発剤クロミッドをのんで排卵を起こさせていました。

ただ、私が一番気になったのはお客様の体重。身長167cm、体重が86.8kg、体脂肪38.5%。BMI 31.1。

7~8年で20kg近く増加、仕事や引越しのストレスでの過食が原因だということです。

それから漢方薬で体を整えながら、食事を見直すダイエット!!ダイエットは孤独な闘いですので、食事の指導はこまめに行っていきました。

30日後 79.8kg 37.1%。50日後 78.3kg 36.7%。90日後 76.3kg 35.6%。

なんと3ヶ月で-10.5kg!

そして4ヶ月後 72.0kg 33.1%(BMI 25.8)。-14.8kgのダイエット成功です!

5ヵ月経ったころには自力で排卵できるようになり、生理周期も30~40日周期と整ってきました。

それから約1年半、食事に気を付けながら漢方を続け、なんと自然妊娠!妊娠中も胎児を守る働きのある漢方薬を飲み、無事出産!37歳でした。

先日、ご主人様と生後3ヶ月の赤ちゃんと一緒にご来店くださいました。いつもお一人でのご来店だったお客様が、こうやって家族が増えご夫婦の間に赤ちゃんがいる、その姿を見せていただくとき、本当によかったな~としみじみ感じます。また赤ちゃんを見つめるご夫婦のまなざしから、こうやって誰しも愛されてこの世に生まれてきたのだと、改めて自分自身にもそして周りにも優しくなれる瞬間です。

 

漢方みず堂溝上薬局空港通り店 三谷典子

体重と妊娠率

米国ハーバード大学の8年間の追跡調査によると、BMI2024の標準体型の女性は、排卵障害による不妊のリスクが最も少ないという結果が出ています。他の論文でも、標準体重の方と比べ、軽度肥満(BMI2431)で不妊リスクが1.3倍。高度肥満(BMI32以上)では2.7倍という結果が出ています。体外受精や人工授精でのデータではありますが、流産率もBMI30以上だと高くなる傾向にあります。

ダイエットで妊娠率向上

また、ダイエット自体が妊娠しやすくするということを示した論文もあります。(Fertil Steril.2014 May;101(5):1400-1403)

BMI 25以上の52名にダイエットを試みてもらい、10%以上のダイエットに成功した群(平均14%体重減)と、失敗した群(平均3.8%減)で、その後の妊娠成績を比較しました。明らかに妊娠率は、ダイエット成功群が高くなっています(88% : 54%)。

 

 

体重減少率 10%以上の減少 10%未満
妊娠率 88% 54%
出産率 71% 37%

 

漢方的な見解

漢方でいうと、肥満とは痰湿・瘀血。つまり、汚れたドロドロとしたお水や血液が蓄積されている状況です。そうなると、その汚れの影響で血液や水の流れが悪くなり、うまく代謝されません。そう、悪循環になるのです。

子宮の中は暖かく、綺麗な血液で満たされていなければ、赤ちゃんは授かることができません。綺麗な血液とは、汚れていないこともそうですが、さらさらと緩やかに流れていることが必須条件です。また、卵巣には痰湿という汚れたお水も蔓延しやすいのですが、そうすると排卵を阻害したり、ひどい時は卵巣嚢腫のような病気になってしまうこともあります。

 

個人的な経験からいうと、それぞれ皆さんには個々の適正体重というものがあると思っています。日本人はBMIでいうと痩せ型の18.5未満の方も多いです。それでも、自分の適正体重であることで、体内の循環がうまくいき、妊娠するのに支障がない。元々痩せ型のモデルさんが問題なく妊娠出産しているのは適正体重に近いからだと推測できます。

ただ、見た目を気にする余り、自分の適正体重を大幅に下回るとホルモンバランスが崩れ、無月経になったりします。漢方的には子宮に栄養を送る「血海」が空になってしまうと、例え痩せすぎを是正しても血海は簡単には元に戻らないので、ホルモンバランスは乱れたまま・・・ということも多くありますので痩せすぎからの月経不順などは危険です。

 

その逆に、太っている方は、必ずしも標準体型(BMI20〜24)になる必要はないと思っています。ダイエットをするということは、生活を正すということです。お菓子や白米、体に悪い油を多く取らないようにし(=痰湿・瘀血を貯めない)、体を動かす(=血・水の循環を促す)生活を続けることで、体の内側は変わってきていますので、ある程度まで余分なものをデトックスできれば、標準体重まで落ちなくとも妊娠にはつながると感じています。特に漢方薬などで体を整えながらダイエットと妊活をすると、体重減少以上の効果があると思います。

メディア出演も多数ある丁宗鐡先生は、著書の中で、日本で戦後に類を見ないベビーブームがあったことや、先進国よりもアフリカなどの飢餓に苦しむ地域の方が子沢山であることは、理屈よりも現象論としてある。不妊というのは恵まれている証拠だとおっしゃっています。

妊婦の栄養状態不良によって低体重児が増えていることを除けば、今の飽食の時代においては、栄養を摂取することよりもいかに節制するべきかの方が授かりやすいのです。

ダイエットしたいときの漢方薬の一例

ダイエットの時の漢方を一部ご紹介。妊娠中は瘀血を取り去る力の強いものやお通じをつける大黄が配合されているものは注意!ぜひ専門家のもとでご自分に合った漢方薬をお飲みください。

 

<防風通聖散>

ダイエットでは有名な処方。お通じをつけ、毒出しができる。長期間飲むと冷える可能性があり、代謝が悪化することも。

防風通聖散でむくみがとれる

 

<大柴胡湯>

ストレス太りにオススメ。お通じをつける大黄も配合。補うものが少ないため、長期間の服用は注意する必要あり。

気の巡りを改善して痩せやすくする~ストレスや不規則な生活~

 

<加味逍遙散>

体力がそれほどない方向けのストレス太りに。お通じに波があったり、ホルモンバランスも乱れている場合にも使いやすい。

気の巡りを改善して痩せやすくする~ストレスや不規則な生活~

 

<柴苓湯>

余分な水分を取り除き、体のバランスを取りやすくする。若干体を乾燥させる傾向にあるので、長期間の服用や体質に合わない場合は注意。

柴苓湯とむくみ

水の巡りを改善して痩せやすくする〜日本人に多い下半身太り〜

 

<当帰芍薬散>

虚証の方向け。マイルドに血行を促進しながら、余分な水分を取り除く。ホルモンバランスの乱れに。胎児を守る働きがあるため、妊娠中にも。

水の巡りを改善して痩せやすくする〜日本人に多い下半身太り〜

妊娠のむくみに当帰芍薬散

 

<桃核承気湯>

瘀血を便と一緒に取り除く。瘀血が原因のホルモンバランスの乱れにも。血虚がある場合は単独で用いない方が良い。

血の巡りを改善して痩せやすくする〜美食家や生理トラブル〜

 

漢方みず堂公式HP「漢方ダイエット特集」


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執筆者 田頭 哉子
薬剤師・漢方みず堂漢方専門相談員
漢方に出会って、考え方や人生観がとても良い方向へ変わりました。
病院やメーカーで勤務していたこともあって、西洋医学と中医学の両面から感じることもたくさんあります。
私自身もずっと漢方をのんでおり、その実体験からや(すごく元気になりました!)、お客様との出会いから学んだことなど、少しでも皆さんの健康と幸せのためにお役にたてる情報をお伝えしていきます!
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