千代樵 豊 が投稿した記事一覧

当帰芍薬散はお酒で飲むのがベスト!?~傷寒論より~

2018年11月29日

漢方の基礎

当帰芍薬散はお酒で飲むのがベスト!?~傷寒論より~

酒は百薬の長!?

西洋のお薬では、「お酒と飲むのは避けて下さい」と説明を受けると思います。実際、単一成分のものが多く服用後吸収され肝臓で代謝(分解)され全身に巡ります。その際、アルコールと一緒に飲むと薬ではなくアルコールを先に分解するので、薬が効きすぎてしまうからなのです。

漢方の世界ではお酒も薬

実はお酒も漢方薬。気を通し温める働きがあると言われていて、一部の漢方薬を煎じる時や服用する時に使います。

傷寒雑病論と当帰芍薬散

傷寒雑病論という漢方薬の古い文献に、

1、婦人懐妊腹中こう痛するは当帰芍薬散之を主る。

2、婦人腹中諸疾痛は当帰芍薬散之を主る。

という文があります。

1は、女性が妊娠してお腹が痛むときは、当帰芍薬散がいいですよ。

2は、女性のお腹の様々な痛みには当帰芍薬散がいいですよ。

という意味で、とにかく妊娠中飲んでいれば安心でき、出産時も痛みも少なく産後のあらゆる病気にもなり難い。と書かれています。

また、この傷寒雑病論という本には、漢方薬の煎じ方、飲み方も細かく書かれています。その中でこの当帰芍薬散には、

「お酒(お猪口1杯分くらい)と混ぜて1日3回服用して下さい」と書かれています。妊娠中ですので、あくまでもお猪口一杯です。

当帰四逆湯・当帰四逆加呉茱萸生姜湯で煎じ方が違う

また傷寒雑病論には、

1、手足がひどく冷えて脈が細く絶えそうなのは、当帰四逆湯がこれを主る。

2、もし病人が平素から冷え症のものは、当帰四逆加呉茱萸生姜湯の服用が宜しい。

という文もあり、1番は通常通り水で煎じるように書かれているのですが、

2番目の煎じ方はそうではなく、

水と清酒を半分ずつで煎じ、これを5回(以上)に分けて温かくして飲んで下さい。

とあります。

 

人を見て、症状を見て、組み立てられている漢方薬。奥深いものがありますね。

 


執筆者 千代樵 豊の画像

執筆者 千代樵 豊
薬剤師・漢方みず堂漢方専門相談員
漢方薬については中学生の時から縁があったように思います。
そして大学を卒業してからずっと漢方薬と共に歩んできました。
だからか、人と話をしていると自然と鑑別(漢方薬を決める作業)している
自分がいます。
調剤薬局でも勤務しているため、日々西洋と東洋の狭間で生きています。
一生勉強、一生修行のもと、頑張ってます!

高齢者の不眠症は「陰虚」が原因

2015年12月29日

不眠症と漢方

高齢者の不眠症は「陰虚」が原因

眠れない理由は様々

81歳の女性。

いや~眠れないときが多くて。病院で睡眠薬をもらっているが全然眠れなくて・・・いつも10時~11時には床に入るが、寝付けなくて2時くらいまで起きている。

年を重ねるとよく聞くお話し。でもこの「眠れない」には実は様々な原因があるんです。

「どうして眠れないのか?」をちゃんと聞かないと、本人もなぜ眠れないのか?が分からない時があるんですよね。

どんな感じなのか?をよくよく聞いていると、

・ひどくはないが咳がちょこちょこ出る。乾燥したときは特に。

・ふだん疲れていて、あまり動けないし動きたいと思わない。

・足が火照る。特に夜に。

・口が渇く。そしてよく水分を取るが、冷たいのがいい。

・食欲、お通じは普通。

・残尿感が時々。家ではしょっちゅう行くので頻尿かな?と思っている。

典型的「陰虚証」

まとめると、咳が出て、足が火照る。それが気になって眠れない。身体もだるいままなので、それで眠れない。

陰陽のバランスが崩れて、足の火照りや咳などの「熱証」が発生、それを冷ましたいので冷たいものを欲しがるんですね。

上記から、典型的な「陰虚証」。陰虚は簡単に言うと、冷ましたり、休めたり、回復させる力が弱っている状態のこと。年齢を重ねるとどうしてもなりやすいです。

補陰剤の中でも特に下半身の熱症状をとる漢方を飲んでもらいましたが、これはとにかく苦い!

大丈夫かな?と心配していましたが、返ってきた言葉は、「あれって少し甘いですよね」・・・?

不思議と漢方は合えばおいしく感じると言います。

身体に合うと改善も早い

2週間目で身体が軽くなり、肌の調子も良くなったみたいで、友達から「化粧品変えた?」「何か若くなったね」と言われるくらいに。火照りも軽くなり、咳も回数が減るように。

1ヵ月後には足の火照りは2~3日に1回くらいに。血液検査の数値も全て正常範囲に。

眠剤を飲んでも眠れなかったのがぐっすり眠れるようになり、途中起きてもまた眠れるように。いつの間にか週4日は外出して動き回って疲れる。でも、翌朝元気に!

現在は足の火照りもなく、咳もほぼ消失し元気な毎日を送っています。


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執筆者 千代樵 豊
薬剤師・漢方みず堂漢方専門相談員
漢方薬については中学生の時から縁があったように思います。
そして大学を卒業してからずっと漢方薬と共に歩んできました。
だからか、人と話をしていると自然と鑑別(漢方薬を決める作業)している
自分がいます。
調剤薬局でも勤務しているため、日々西洋と東洋の狭間で生きています。
一生勉強、一生修行のもと、頑張ってます!

消渇証~漢方は病名は関係ない~

2015年9月15日

糖尿病と漢方

消渇証~漢方は病名は関係ない~

20代後半の男性

「ダイエットで自分を変えたい」との事で多くは語らない男性でした。

体重がここ2年で10kg近く増えた。
父親と2人で生活しているので食事は弁当ばかりで仕事もハード。
すごく暑がりで喉が渇き、飲んでも満足しない。汗は噴き出るように出るが、ずっと下痢している。
血圧も140近くまで上がっていた。急にイライラすることも多くなった。

典型的「消渇証」

この方は当初、ダイエットがしたいということだけで、後から分かる過敏性腸症候群や糖尿病予備軍であることはおっしゃいませんでした。

しかし、漢方では病名は重要ではありません。糖尿病という病名も近代になってできたもので、古い中医学の文献では糖尿病に良く似た証として「消渇証」とでてきます。「消」は痩せるという意味で、糖尿病が進行すると多食にもかかわらず痩せてくる症状があてはまります。「渇」は口渇のことで、飲んでも飲んでも喉が渇くという糖尿病の顕著な症状です。

この方も、吹き出るような汗、飲んでも飲んでも喉が渇く、典型的「消渇証」でしたので、あとからカミングアウトされた時も納得でした。

改善してからのカミングアウト

1ヶ月服用して、暑さをあまり感じなくなったのと、下痢と湿疹が良くなってきた。
2ヶ月で体重も約8kg下がったが、食べられないのが辛いだけで、体の疲れは感じなくなった。
その後たまたまのタイミングで病院で検査したら、血圧、血糖値が正常に。
この頃「実は言ってなかったんですが・・・」と湿疹がお尻にあった事、過敏性腸症候群で下痢が続いていた事、血糖値が高く糖尿病予備軍と言われていた事を告白。この年で病気があり過ぎて劣等感から言えなかったそうです。それが全て改善し「病院の先生から、あれ?何で?と言われました」と。

一見別々のように見える病気も、体全体を良くすることで全てが良くなっていくのが漢方の素晴らしさだと思います。


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執筆者 千代樵 豊
薬剤師・漢方みず堂漢方専門相談員
漢方薬については中学生の時から縁があったように思います。
そして大学を卒業してからずっと漢方薬と共に歩んできました。
だからか、人と話をしていると自然と鑑別(漢方薬を決める作業)している
自分がいます。
調剤薬局でも勤務しているため、日々西洋と東洋の狭間で生きています。
一生勉強、一生修行のもと、頑張ってます!

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